生成AIのハルシネーションを抑え、意味を理解して答える独自AI。「AEI」を提供する株式会社pluszeroにインタビュー

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株式会社pluszeroは、AI・自然言語処理を中心に、課題の整理から要件定義、開発、保守・運用までを一気通貫で支援する技術企業です。船舶レーダー画像からの偽像検出、学校給食センターの配送ルート最適化、証券会社のAIオペレーターなど、幅広い領域でAIの社会実装に取り組んできました。

その中核にあるのが、独自技術AEI(Artificial Elastic Intelligence)です。pluszeroはAEIを、人間のように言葉や情報の意味を理解し、特定の業務領域で柔軟にタスクを遂行するAIを目指す独自の概念・技術として研究開発しています。生成AIや大規模言語モデルと組み合わせることで、ハルシネーションを抑え、より高い信頼性が求められる業務への適用を目指しています。

今回は、AEIの考え方と、企画段階から保守・運用まで一社で担うAI導入支援について、株式会社pluszero 代表取締役社長 COO / 博士(科学)の森遼太氏にお話を伺いました。

森遼太氏 プロフィール

株式会社pluszero 代表取締役社長 COO / 博士(科学)

東京大学理学部生物情報科学科を卒業後、同大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻の博士課程を修了。産業技術総合研究所(AIST)の計算生物学研究センターで、統計や人工知能を活用した生物情報解析に従事しました。能力テスト理論の開発、個人ゲノムに基づく疾病リスク推定、画像認識など、数理・機械学習を用いた幅広い研究・開発に携わってきました。

2018年7月、永田基樹氏とともに株式会社pluszeroを設立。2022年10月に東京証券取引所グロース市場へ上場し、2024年7月には経団連へ入会しています。

目次

事業概要とAEIの位置づけ

貴社の事業概要と、今回ご紹介いただくAEIの位置づけを教えてください。

船舶レーダーの画像から実在しない船影を見分ける。学校給食の配送ルートを、ベテランの経験だけに頼らずAIで設計する。証券会社の電話窓口で、AIオペレーターがお客様の発話内容を踏まえて応対する。

株式会社pluszeroは、このように一見すると異なる領域の課題をAIで解いてきました。AIや情報処理分野の研究室出身メンバーを中心に、年間100社規模のお客様を支援しています。

私たちの特徴は、作るものが決まった段階から参加するのではなく、そもそも何を解決すべきかを考える企画段階から関わることです。課題整理から要件定義、開発、運用までを一社で担い、お客様からは社内の情報システム部門を外部に拡張するような感覚で相談できると言っていただくこともあります。

AEI(Artificial Elastic Intelligence)は、その中核となる独自技術です。pluszeroでは、人間の言葉や情報の意味を本質的に理解し、特定の業務範囲で柔軟にタスクを遂行できるAIを目指して研究開発しています。生成AIと組み合わせることで信頼性を高め、AIオペレーターmiraioや営業支援領域など、複数のプロダクト・ソリューションへ展開しています。

この事業を立ち上げるに至った経緯を教えてください。

私はもともと起業を考えていたタイプではありません。東京大学で生物情報科学を学び、博士号を取得し、産業技術総合研究所で統計とAIを使った研究に取り組む、研究者としてのキャリアを歩んでいました。

研究を続けるなかで感じていたのが、技術的には解決できるはずの問題が、なぜ実社会では解決されないのかということです。研究では実現できていることでも、企業の現場ではPoCの段階で止まってしまう。AIを作る会社、システムに組み込む会社、業務を設計する会社が分かれ、最後まで責任を持つ主体が不明確になる構造も、その一因だと考えました。

そこで2018年、永田基樹氏とともにpluszeroを設立しました。目指したのは、研究レベルの技術力と、業務に入り込んで最後まで実装する力を一社の中に持つことです。

pluszeroという社名には、ゼロという概念の発見が数学を大きく発展させたように、非連続的な変化のきっかけとなる新しいアイデアを社会へ提案したいという想いが込められています。

AEIが解決を目指す課題と対象企業

AI導入の現場では、どのような課題が起きていますか。

AI導入の現場で表面化するのは、PoCから本番導入へ進まない、導入しても現場で使われないといった問題です。私たちは、その背景に大きく3つの構造的な課題があると考えています。

1つ目は、技術ありきでAI導入が始まってしまうことです。
AIで何かしたい、生成AIを業務で使いたいという相談は増えていますが、何を解決したいのか、そもそもAIを使うべき課題なのかが曖昧なまま進むケースもあります。私たちは、どの問題を解くべきかという企画段階から整理することを重視しています。

2つ目は、生成AIのハルシネーションです。
生成AIは非常に有用な一方、誤った内容をもっともらしく生成する可能性があります。特にコールセンターや顧客接点など、誤りの影響が大きい領域では信頼性が重要になります。pluszeroでは、AEIを生成AIと組み合わせることで、この信頼性を高めるアプローチを研究・実装しています。

3つ目は、AI開発の責任が複数社へ分散しやすいことです。
AIモデル開発、システム実装、業務要件の整理、運用を別々の組織が担当すると、問題が起きた際に責任や改善主体が曖昧になりやすくなります。pluszeroでは、企画段階から保守・運用まで一気通貫で関わることで、この分断を減らすことを重視しています。

どのような企業が対象になりますか。

情報通信、製造、サービス、小売、インフラ、商社、金融、SaaS、医療、建設、官公庁、研究機関など、業種を限定せず支援しています。相談部門も、DX推進、情報システム、新規事業、経営企画、業務改革から、事業責任者・役員クラスまで幅広くなっています。

特に、次のような状況にある企業との相性がよいと考えています。

  • AIを活用したいが、具体的なテーマや着手点が定まっていない
  • PoCを実施したものの、本番導入まで進められていない
  • 生成AIを顧客接点へ導入したいが、誤回答やハルシネーションが懸念になっている
  • 過去にAIプロジェクトが頓挫した、または他社では難しいと言われた課題がある
  • 企画から開発・運用まで、一社で継続的に伴走するパートナーを探している

サービスの特徴と提供の流れ

pluszeroの強みを教えてください。

強みは大きく3つあります。

1. 企画段階から保守・運用までの一気通貫体制
与えられた問題やデータをもとに開発するだけではなく、最初にどの問題を解くべきかという課題整理から参画します。その後の要件定義、システム構築、保守・運用までを一社で担います。自然言語処理、画像処理、データ基盤、ハードウェアなど幅広い技術領域に対応するメンバーと、業務課題を整理する人材を社内に揃えていることが、この体制の基盤になっています。

2. 独自技術AEIによる信頼性向上への取り組み
pluszeroは、人間の言葉を本質的に理解するAIを目指し、創業期からAEIの研究開発を進めてきました。生成AIやLLMとAEIを組み合わせることで、柔軟な応答能力と信頼性の両立を目指しています。特に、コールセンターやカスタマーサポートなど、誤回答の影響が大きい領域への展開を進めています。

3. 先行事例の少ない課題にも取り組める技術体制
船舶レーダーの偽像検出、膵がんの自動検知、CAD設計図面の自動チェックなど、既存のパッケージだけでは対応しにくいテーマにも取り組んできました。多様な研究バックグラウンドを持つ技術者が、新しい技術を検証しながら実装へつなげる体制を持っています。

サービス提供の流れを教えてください。

ご相談時にテーマが明確でないケースも多いため、まず概要を伺い、課題を整理し、実現可能性を確認する初期ステップから始めます。初期検討は通常1〜2週間を目安とし、業務やデータを確認しながら、AIで解くべき課題なのか、通常のシステム開発で解くべき課題なのかを切り分けて提案します。

その後、具体的にプロジェクトを進める場合は、次の7段階を基本としています。期間は一般的な業務システム開発を含んだAI開発の案件の典型値で、プロジェクトの内容やデータの状態によって前後します。

フェーズ 内容 目安期間 クライアント側の関与
①課題整理 業務課題の構造化、AIで解くべき範囲の確定 2週間〜1ヶ月程度 業務担当者からの情報提供
②データ確認 データの種類・量・品質の確認 データ提供
③実現可能性検証 技術的に実現可能か、小規模に検証
④PoC 限定スコープでの試験運用 1〜3ヶ月 業務担当者の評価協力
⑤要件定義 本開発に向けた仕様確定 1〜2ヶ月 業務担当者・意思決定者による仕様判断
⑥本開発 システムの本実装 2〜6ヶ月 仕様レビュー
⑦運用・改善 運用開始後の継続改善 継続 利用フィードバック

各段階で次に進む価値があるかをお客様と確認しながら進めるため、最初から大規模な投資を前提とするのではなく、段階的に検証・開発することができます。AI案件には不確実性があるため、短いサイクルで進捗を共有しながら柔軟に調整できる進め方を推奨しています。

料金体系について、公開できる範囲で教えてください。

案件の規模、難度、データの状態によって変動するため、初期相談のうえ個別に見積もりを行っています。フェーズを区切り、各段階で次に進むかを判断する段階投資型の進め方を基本としています。

導入事例と実績

印象に残っている導入事例を教えてください。

古野電気株式会社 / 船舶レーダーの偽像検出による無人航行支援

船舶の無人航行実現に向け、レーダー画像から偽像を見分ける必要がありましたが、波や天候の影響で画像が時系列に変化するため、従来手法では検出精度に限界がありました。AI技術と人間の知見を組み合わせ、複雑なレーダー画像から偽像を判別するエンジンを共同開発した結果、検出率96%(目標95%)、誤検出率1.6%(目標2%以下)を達成しました。

古野電気の事例詳細を見る →

株式会社中西製作所 / 給食センター配送ルート設計と積載計画の最適化

学校給食センターの配送ルート設計とコンテナ積載計画は、長年ベテランの経験と勘に依存する属人化業務となっていました。現場の知見をヒアリングによって形式知化し、AIによる最適化アルゴリズムへ落とし込むことで、計画作成業務の標準化を進めています。

中西製作所の事例詳細を見る →

導入実績について教えてください。

年間100社規模のお客様にソリューションを提供しています。業界は製造、サービス、小売、インフラ、メーカー、商社、金融、SaaS、医療、建設、官公庁、研究機関など多岐にわたります。

これまでに公開されている主な取り組みには、次のようなものがあります。

  • 船舶:古野電気様のレーダー偽像検出
  • 製造:中西製作所様の給食センター配送ルート・積載計画の最適化
  • 小売・サービス:トラストバンク様のふるさとチョイス検索体験向上
  • 教育:啓林館様の教科書と連動したAI教材の開発
  • 金融・店舗IT:エクステック様の外貨両替システム開発
  • 人材:キャリア様のOCRを活用したシステム
  • 自動車:アビスト様のAI・OCRを活用した車両認証自動化
  • 証券:東海東京証券様のAIオペレーターmiraio
  • コールセンター:アップセルテクノロジィーズ様とのAIオペレーター領域での取り組み
  • エンターテインメント:レック様のAI Charmyへの技術協力
  • 金融サービス:ファーストパートナーズ・グループ様とのAIファンド開発、Brain Plus for Salesの提供

pluszeroのプロジェクト事例を見る →

今後の展望とメッセージ

今後の展望と、事業を通じて実現したい未来について教えてください。

私たちのミッションは、知の創発により、新しい選択肢を生み出すことです。生成AIの登場で誰もがAIを試せる時代になりましたが、業務に深く入り込み、安心して任せられるAIの実現には、まだ多くの課題があります。

今後はAEIを軸に、人間の言葉を本質的に理解するAIの実現をさらに追求し、コールセンター、カスタマーサポート、営業教育、製造、医療など、さまざまな領域で人とAIが自然に協業できる環境を広げていきたいと考えています。

目指しているのは、AI導入で困ったときにpluszeroへ相談しようと、多くの企業に思っていただける状態です。日本企業のAI活用をPoCで止まる段階から、実際の業務に根付く段階へ進めるため、技術と実装の両面から支えていきます。

AI導入を検討中の企業担当者へメッセージをお願いします。

AI導入を成功させるために、最初に考えていただきたいのは、AIで何ができるかではなく、自社で本当に解決したい業務課題は何かということです。技術から出発するのではなく、業務課題から考えることで、AIを使う場合も、別の技術を使う場合も、実際の成果につながる判断がしやすくなります。

株式会社pluszeroの企業概要

会社名 株式会社pluszero
代表者 小代 義行(代表取締役 会長 兼 CEO)
森 遼太(代表取締役社長 COO)
所在地 〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-6-10 仙田ビル4F
設立 2018年7月10日
事業内容 AI・自然言語処理、ソフトウェア、ハードウェア等を組み合わせたソリューションの企画・開発・保守・運用・販売、および関連するコンサルティング
今回の紹介テーマ AEI(Artificial Elastic Intelligence)を軸としたAIソリューション
公式サイト 株式会社pluszero 公式サイト →

編集後記

今回の取材で印象的だったのは、AIという技術そのものから考えるのではなく、最初に解決すべき業務課題を定めるという姿勢です。AI導入がPoCで終わるケースが少なくないなか、企画、技術検証、開発、運用までを一つの流れとして設計することは、AIを実際の業務へ定着させるうえで重要な視点だと感じました。

もう一つの特徴が、独自技術AEIを軸に、生成AIの柔軟性と業務で求められる信頼性の両立を目指している点です。船舶、製造、金融、コールセンターなど異なる領域での実装経験を積み重ねながら、AIを研究段階で終わらせず、現場で使われる仕組みに落とし込む。その一気通貫の体制が、pluszeroの大きな特徴といえます。

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発行:一般社団法人日本AI導入支援協会(J-AIX)

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AI JOURNAL編集部は、一般社団法人日本AI導入支援協会が運営する、AI活用に挑戦するビジネスパーソンを応援するメディアチームです。編集部の運営体制・編集方針はこちら

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