株式会社WellAIは、システム受託開発を主軸に、AI導入コンサルティングとAI活用研修(インハウス化支援)を手がけるスタートアップです。自社プロダクトとして展開する3軸統合感情分析は、人の感情を音声・表情・テキストの3つの軸から同時に解析し、リアルタイムで状態を可視化する技術で、これをAIアバターやAI電話に連携させ、応答や接客品質の評価に即時反映できる点が特徴です。
今回は、3軸統合感情分析が解こうとする“感情のブラックボックス化”という課題と、それを社会の基盤として実装するまでの構想について、株式会社WellAI 代表取締役の古井戸俊也氏にお話を伺いました。
古井戸俊也氏 プロフィール
株式会社WellAI 代表取締役。
診療放射線技師の国家資格を持つ、医療職出身のプログラマー兼起業家。現在は経営の傍ら、UMass(マサチューセッツ州立大学)のMBAプログラムに在籍し、実践知をアカデミックな理論で裏付ける学びを続けている。キャリアは診療放射線技師として約7年医療現場に従事することから始まり、その後プログラマーとしてHP・LP制作の受託を手がけ、並行してWebシステム・業務システムの開発をフロントエンドからバックエンド、AI関連実装まで幅広く経験。さらにマーケター/CMO/COOとして約1年、AI企業の立ち上げに参画し、マーケティング統括と並行してForward Deployed Engineer(FDE)としてクライアント現場に入り込み、AI導入の要件定義から実装・社内定着まで伴走した。2025年6月、株式会社WellAIを創業し、現在に至る。
2026年4月のNexTech Week 2026(東京ビッグサイト)に出展・登壇し、約1,000名が来場。月刊“事業構想”のAI・DX特集でインタビューを受けるなど、発信を行っている。
三軸統合感情分析

株式会社WellAIが提供する「三軸統合感情分析」は、音声・
AIアバターやAIコールセンターと連携することで、相手の状態に応じた応答の最適化や、接客・案内・問い合わせ対応における品質の評価・改善に活用できます。
事業概要とサービスの位置づけ
貴社の事業概要と、今回ご紹介いただくサービスの位置づけを教えてください。
株式会社WellAIは、システム受託開発を主軸とするスタートアップです。クライアントの業務に合わせてAIシステムをゼロから設計・開発し、その上流にあたるAI導入コンサルティングと、導入後に社内で使いこなすためのAI活用研修(インハウス化支援)を提供しています。そして自社プロダクトとして、AIアバター、AI電話、感情分析を展開しています。
今回ご紹介するのは、その中核にある世界初の“三軸統合感情分析”です。人の感情を、音声・表情・テキストの3つの軸から同時に解析し、リアルタイムで状態を可視化する技術で、これをAIアバターやAI電話に連携させることが可能です。既存の感情分析は、テキストか音声を文字起こしして解析させる手法が一般的でした。弊社の3つを統合し、他のソリューションに連携させ応答や接客品質の評価に即時反映するところまでやり切ったものは、世界に存在しません。
私たちがこの技術で目指しているのは、“感情のインフラ”として社会に実装することです。電気や通信が社会を支える基盤であるように、人の感情や本当の状態を捉え、理解する仕組みが、社会の当たり前の基盤として機能する世界を目指しています。
この技術は、コールセンターにおける対応品質の可視化、接客や医療現場でのコミュニケーション支援、メンタルウェルネスの早期ケアなど、“相手が本当はどう感じているのか”を理解することが成果につながる、さまざまな現場で活用できます。
今回ご紹介するサービスは、その実現に向けた第一歩となるソリューションです。感情解析技術を実際の業務へ組み込み、現場で継続的に活用できる形で提供することで、私たちが目指す社会の実現を支えます。

AIアバターイメージ
このサービス・事業を立ち上げるに至った経緯を教えてください。
原点は、私自身が診療放射線技師として立っていた臨床現場にあります。患者さんは“大丈夫です”と答える。けれど、その一言の裏にあるのは、安堵なのか、我慢なのか、怒りなのか、拒絶なのか、言葉だけでは判別できません。優れた医療従事者は、相手の声のトーン、表情、言葉を無意識のうちに統合して、その本心を読み取っています。私はこの“言葉にならない本心をどう捉えるか”という問いを、ずっと抱え続けてきました。
やがて気づいたのは、これが医療現場に限った話ではないということです。コールセンター、採用面接、上司との1on1、商談。“大丈夫です”“問題ありません”という一言は、どこにでもあります。相手が本当はどう感じているかが見えないまま、私たちは日々判断を下している。優れた人間が声・表情・言葉を統合してそうしているように、その本心を読み取る仕組みがあれば、もっと多くの人が救われ、もっと多くの判断が正しくなるはずだ。そう確信しました。
医療の問題意識と、技術と、現場への実装力。このどれが欠けても、感情を“データとして社会に実装する”ことはできません。だからこそ、自分たちがやるべきだと考えました。
貴社のサービスが解決しようとしている課題について教えてください。
私たちが解こうとしているのは、“感情のブラックボックス化”という、業種や規模を問わず経営に直結する構造的な課題です。
多くの企業が、顧客や従業員が“本当はどう感じているか”が見えないまま意思決定を下しています。その結果、顧客の本音がつかめず解約やクレームの予兆を見逃す、従業員の声なきSOSを拾えず突然の離職に至る、接客や面接の質がベテランの勘に依存して標準化も継承もできない。こうした問題が、あらゆる現場で起きています。感情が見えないことは、単なる現場の悩みではなく、事業成長を静かに阻害する経営課題なのです。
見落とされがちなのは、この課題が“既存のツールでは原理的に解けない”という点です。アンケートやNPSは事後的で、建前の回答が混ざる。テキスト感情分析は言葉以外のサインを見落とす。音声分析は文脈を取りこぼす。いずれも単一の手がかりに頼るため、肝心の“言葉と本心の乖離”を捉えきれません。手法を一つ足すだけでは、この溝は埋まらないのです。
だとすれば、優れた人間がそうしているように、声・表情・テキストの3つを同時に統合する仕組みが必要でした。それが世界に存在しないのなら、自分たちで作るしかない。私たちは、誰も統合してこなかったこの3軸を束ね、“言葉と本心の乖離”を可視化することで、これまで誰も手をつけられなかった領域の課題解決に挑んでいます。
ターゲットとサービスの強み
どのような企業がターゲットですか?
“AIを活用したいが、何から始めればよいか、誰と組めばよいかが定まっていない”段階の企業です。DX推進部門に限らず、現場改善やCX(顧客体験)、従業員エンゲージメント、コールセンターや採用など、解決したい課題を持つ部門であれば、どこからでもご相談いただけます。規模としては、中小企業から大手企業まで、企業規模を問わず取り組めます。
また、弊社は機微な情報を扱う、セキュリティ要件の厳しい組織にも対応できる点が強みです。データを社外に出さず自社内で完結させるオンプレミス型の提供が可能なため、自治体、研究機関、医療など、規制やコンプライアンス対応が求められる領域も重要なターゲットと位置づけています。クラウド型との併用(ハイブリッド運用)も選べるため、要件に応じて最適な形を選択いただけます。
サービスの特徴・強みを教えてください。
一つ目は、世界初の三軸感情分析です。音声・表情・テキストの3つの軸を同時に統合し、リアルタイムで感情を解析します。声のトーンや抑揚から本人も気づかない機微を捉え、0.5秒未満の微表情(マイクロエクスプレッション)を検出し、LLMで文脈を理解する。この3軸を統合する独自アルゴリズムが、単一の手がかりでは見逃す“言葉と本心の乖離”を可視化します。
二つ目は、オンプレミス対応です。データを社外に出さず、自社内で完結させるオンプレミス型での提供が可能です。AIベンダーの多くはクラウドAPIを前提に構築されており、機微情報を扱う組織が“データを外に出せない”という壁に阻まれるからです。弊社は、パートナー企業との連携により、高性能なハードウェアの調達から構築までを担えるため、医療・金融・自治体・研究機関といった規制やコンプライアンスの厳しい領域でも導入できます。さらに、クラウド型・ハイブリッド運用も選べるため、スピード重視からセキュリティ重視まで、要件に応じた最適な形をご提案できます。
三つ目は、一気通貫・ワンベンダー提供です。構想段階のヒアリング・要件定義から、PoC、本実装、そして運用定着・改善までを、当社が一社で一気通貫で担います。窓口が一つで完結することは、スピードと品質、そして“作って終わりにしない”定着の確度に直結します。
導入の流れと料金
サービス提供の流れを教えてください(問い合わせ〜提供完了まで)
導入を検討される企業が“自社が導入したら、どう進むのか”を具体的にイメージできるよう、ヒアリングから運用まで一気通貫の4ステップでご説明します。
まず最初は、ヒアリング・要件定義です(2〜4週間)。業務課題と要件を整理することから始め、“どの業務の、どんな困りごとを解きたいのか”を一緒に言語化し、AIをどう適用するかのシナリオを策定したうえで、何をもって成功とするかの指標(成功指標)を設定します。ここで“そもそもAIでやるべきか”も含めて見極めます。クライアント側には、現場の課題感の共有と、判断軸の擦り合わせにご協力いただきます。
次に、PoC・検証です(1〜2ヶ月)。いきなり大きく作らず、まずプロトタイプを構築して小さく試します。実際の業務に近い環境で効果を検証し、改善を重ねたうえで、本番展開に進むかどうかを判断します。投資を最小限に抑えながら、確かな手応えを確認できる段階です。クライアント側には、検証用データのご提供や、現場担当者によるフィードバックをお願いします。
続いて、本実装・カスタマイズです(3〜6ヶ月)。PoCで効果が確認できたら、本番環境の構築に移ります。ブランドや業務に合わせた最適化を行い、既存の業務システムとの連携も実装します。実際の運用に耐える形へと作り込んでいくフェーズです。
最後が、運用定着・改善です(継続的)。最も重視するのが、導入後に“社内で使われ続ける”状態をつくることです。運用状況をモニタリングしながら継続的な改善サイクルを回し、効果が出た領域から活用範囲を広げていきます。“私たちがいなくても回る”状態を目指し、定着まで伴走します。
期間の目安は、ヒアリングからPoCまでで概ね1〜3ヶ月、本実装まで含めると数ヶ月規模となります。導入後も継続的にお付き合いし、改善と活用拡大を支援します。
料金体系について、公開できる範囲で教えてください。
料金は、お客様の業務内容・要件・導入形態によって最適な構成が大きく変わるため、個別のお見積もりを基本としています。自社プロダクト(AIアバター/AIコールセンター/三軸感情分析)については、それぞれに料金をご用意しています。
導入事例と実績
印象に残っている導入事例を教えてください。
業種は住宅。約150名の全社員を対象にした、オフラインのハンズオン研修でした。ITに強い一部の社員だけでなく、職種も年代もばらばらの社員が全員、同じ場に集まって自分の手を動かす。この“全社一斉・現場込み”で踏み込んだこと自体が、この研修の一番の特徴だったと思います。
研修前は、社内で“AI”という言葉こそ聞こえていたものの、実際に業務で使えている社員はごく一部でした。“便利らしいが、自分の仕事に何の関係があるのか分からない”。そんな距離感が、正直なところ大半を占めていたと思います。
そこで研修では、説明を聞いて終わりにはせず、“参加者一人ひとりが自分の手でAIを使いこなす”ところまでをゴールに据えました。得意・不得意は関係なく、全員が“自分でもできた”という成功体験を必ず持ち帰る。その一点にこだわっています。
結果として、受講後には全社員がAIを使いこなすレベルまで到達しました。しかもこの研修は一度きりで終わらず、社員が自分で作ったものを発表し合う“社内AIピッチ”の開催にまで発展しています。AIを“誰かに与えられて使うもの”から、“現場の自分たちが作って持ち寄るもの”へと、社内での捉え方そのものが変わっていきました。
全社的にAIリテラシーが底上げされただけでなく、“AIは一部の人のもの”という壁が崩れ、現場が主導してAI活用を内製化していく文化が根づき始めた。研修を打ち上げ花火で終わらせず、組織が自走しはじめる起点になった事例として、強く印象に残っています。
導入実績について教えてください。
弊社の開発実績は、13の業界にわたります。具体的には、ブライダル、メディア、空港、IT、ヘルスケア、住宅設備、化学、半導体、SES、製造、広告、電子書籍、大学です。業種を問わず成果を出せることが、当社ソリューションの汎用性を裏付けています。
代表的な成果例としては、ブライダル業界で対応自動化70%、空港運営でインバウンド購買率15%向上、製造業でユーザー満足回答率80%、電子書籍で翻訳工数40%削減、大学でAI学習処理時間90%短縮などがあります。
今後の展望とメッセージ
今後の展望と、サービスを通じて実現したい未来について教えてください。
私たちが目指しているのは、AIを単なる効率化の道具ではなく、人と人をつなぎ直す手段にすることです。AIはあくまで手段であり、本当に大切なのは、それを使いこなす人だと考えています。技術が人に取って代わるのではなく、人が持つ共感力や判断力を、AIが下支えする。私たちが見据えているのは、そういう“人が主役であり続ける”未来です。
その手段の一つが、三軸感情分析です。この技術を、私たちは“感情のインフラ”として社会に浸透させていきたいと考えています。今はまだ、音声・テキスト・表情認識の3軸による感情分析の導入に取り組んでいる段階ですが、見据えているのは、それが医療・教育・介護・職場・地域社会のあらゆる場面に広がり、“声なきSOS”を掬い上げる未来です。たとえば、がんの告知を受けた方がAIアバターとの何気ない対話の中で初めて“怖い”と言える。表情と声の変化から、子どものいじめや高齢者の体調の急変を、深刻化する前に気づく。感情が見えることは、こうした“届くべき声が届かなかった”状況を、一つずつ変えていく力になります。
かつて松下幸之助氏が“水道哲学”を掲げ、良質なものを安価に大量に供給することで物質的な豊かさを社会の隅々まで届けようとしたように、私たちはその思想を“心の領域”に引き継ぎたいと考えています。誰もが、必要なときに自分の心の状態に気づける。言葉にできない想いを汲み取ってもらえる。そんな“感情のインフラ”を、水道の水のように社会の隅々まで届けること。それが私たちの夢です。
そして、人が主役であるという思想は、技術の進化に伴ってさらに大きな可能性へとつながっていきます。現在の音声・表情・テキストは、人の“外側”に現れるシグナルから心を読み取る技術ですが、その先には、脳波・筋電位・心拍・呼吸といった“内側”の生体信号を用いた非言語コミュニケーションの実現があります。これが可能になれば、重度の身体障害を持つ方でも、言葉や身体の制約を超えて自由に意思を伝え合える。感情の可視化から、生体信号による意思疎通へ。AIという手段を磨き続けることで、一人ひとりがより自分らしく生きられる社会を切り拓いていきたいと考えています。
AI導入を検討中の企業担当者の方に向けて、メッセージをお願いします。
一つだけお願いしたいのは、“ツールから入らず、課題から入る”ことです。“どのAIを使うか”より先に、“どの業務の、どんな困りごとを、なぜ解きたいのか”を言葉にしてください。ここが曖昧なまま導入を進めると、ほぼ確実にPoC止まりになります。AI導入の成否を最終的に分けるのは、ツールの性能ではなく、解くべき課題が明確かどうかです。
そして、丸投げにしないこと。AIは入れて終わりではありません。最終的に効果を生むのは、社内に“使い続けられる体制”が残るかどうかです。最初は小さく始めて構いません。一つの業務で成功体験をつくり、それを社内に広げていく。この順番が、遠回りに見えて実は最短です。
逆に、やってはいけないのは“AIを導入すること自体が目的化する”ことです。私たちは、AIでやるべきでない領域であれば、正直に“ここはやめましょう”とお伝えします。お客様の成功だけを見ているからこそ、できないことや向かないことも、はっきりお伝えします。
AIは、なんでもできる訳ではありません。けれど、課題から逆算し、現場を巻き込み、社内に根づかせていけば、確実に大きな力になります。“何から始めればいいか分からない”。その状態こそ、私たちが最も得意とする出発点です。まずは気軽にご相談ください。一緒に、現場で本当に使われるAIを設計していきましょう。
株式会社WellAIの企業概要

| 会社名 | 株式会社WellAI |
|---|---|
| 代表者 | 古井戸俊也 |
| 所在地 | 東京都港区北青山1-3-3 三橋ビル3階 |
| 設立 | 2025年 |
| 事業内容 | 自己進化型AIアバターやAIコールセンター、セキュアAI基盤を提供するAIスタートアップ。 |
| サービス名 | WellAI セキュアAI基盤 MIRAI |
| 公式サイト | https://wellai-inc.co.jp/ |
編集後記
古井戸氏の話で一貫していたのは、感情が見えないことを“現場の悩み”ではなく“経営課題”として捉える視点です。顧客の解約やクレームの予兆、従業員の突然の離職、勘に依存した接客や面接の質。これらの背後に共通する“言葉と本心の乖離”を、アンケートでも単一の感情分析でもなく、音声・表情・テキストの3軸を同時に統合することで可視化しようとする発想は、臨床現場で“大丈夫です”の裏を読み取ってきた経験に裏打ちされたものだと感じました。
もう一つ印象に残ったのは、技術そのものより“使い続けられる体制が社内に残るか”を成否の分かれ目として語っていた点です。約150名の全社員研修が“社内AIピッチ”へと発展した事例や、“ツールから入らず、課題から入る”というメッセージは、AI導入を検討する担当者にとって具体的な示唆になるはずです。感情のブラックボックス化に心当たりのある方は、まず自社のどの業務の何を解きたいのかを言葉にするところから、相談を始めてみてはいかがでしょうか。





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