株式会社エモスタは、人間の表情や言語から感情・心理を定量化し、心理学的に分析するサービスを開発する企業です。メインプロダクトのエモリーダーは、コミュニケーションの約93%を占めるといわれる非言語情報のうち、その大きな部分にあたる顔の表情に着目し、これまで経験と勘に委ねられてきた感情情報を定量化して、専門家の判断を支えるものさしを提供します。
今回は、エモリーダーが感情をどのように定量化し、「測った先の意思決定」をどう設計するのかについて、株式会社エモスタ CEOの小川 修平氏にお話を伺いました。
小川 修平氏 プロフィール
株式会社エモスタ CEO
米国インディアナ大学を卒業し、経済学と政治学を専攻。卒業後は三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投資銀行部門でM&Aアドバイザリー業務に従事し、数字とロジックで企業価値を分析する世界に身を置く。
その後、2017年に株式会社エモスタを創業。金融の世界で「定量化できるものは徹底的に評価される一方で、人の感情や心理といった測れないものはそもそも意思決定の俎上に載りにくい」という実感があり、そこにテクノロジーで切り込みたいという思いが起点になった。共同創業者でCTOで心理学者のAlexander Kriegとともに、心理学とAIを掛け合わせた事業を立ち上げる。CEOとして、事業戦略・パートナーシップ・新規プロダクト開発の方向づけを担う。
エモリーダー

事業概要とサービスの位置づけ
貴社の事業概要と、今回ご紹介いただくサービスの位置づけを教えてください。
エモスタは「テクノロジーによって人間への洞察を深める」をミッションに掲げ、人間の表情や言語から感情・心理を定量化し、心理学的に分析するサービスを開発している会社です。事業は大きく、(1) 感情認識AIをはじめとするAIソリューション、(2) 心理尺度開発や体験評価などの心理学ソリューション、(3) AIエージェント群による社会シミュレーションなどの研究支援、の3領域で構成されています。
今回ご紹介する「エモリーダー」は、その中核にあるメインプロダクトです。人間のコミュニケーションの約93%は非言語で行われるといわれ、その大きな部分を占めるのが顔の表情です。エモリーダーは、これまで「経験」と「勘」に委ねられてきた感情情報を定量化し、専門家の判断を支えるものさしを提供する位置づけにあります。
このサービス・事業を立ち上げるに至った経緯を教えてください。
原体験は、前職の投資銀行時代にあります。M&Aの現場では、財務数値は徹底的に分析される一方で、最終的な意思決定を左右するのは「経営者同士の信頼関係」や「組織のカルチャー」といった、数字にならない人間的な要素でした。本来いちばん重要なはずの感情や関係性が、定量化できないという理由だけで議論の外に置かれてしまう。この非対称性に強い問題意識を持ちました。
同じ構造は、心理カウンセリングやコーチング、広告・クリエイティブ、人材育成など、あらゆる「人を扱う領域」に共通しています。プロフェッショナルの優れた仕事ほど職人の暗黙知に依存していて、再現や評価、教育が難しい。だからこそ、感情を定量化し、誰もが扱える形にすることに大きな意味があると考えました。
「なぜ自分たちがやるのか」という問いに対しては、金融で培った定量評価で意思決定を変えるという発想と、共同創業者がもつAI・心理学のバックグラウンドが交わる場所こそ自分たちの立ち位置だ、という答えに行き着きました。感情を測ることがゴールではなく、それによって人が自分と他者への理解を深め、自分の価値観に沿った人生を歩めるよう支援する。そこに事業として向き合うために、エモスタを立ち上げました。
解決する課題とターゲット
貴社のサービスが解決しようとしている課題について教えてください。
たとえばカウンセリングやコーチングの質、広告クリエイティブが本当に人の心を動かしたか、商品やサービスがもたらす「安心感」「心地よさ」といった体験価値。これらはビジネス上きわめて重要であるにもかかわらず、共通のものさしがないために、属人的な感覚で語られ、組織の資産として蓄積されません。
多くの企業は、こうした「測れないもの」を測ろうとするとき、アンケートのような自己申告データに頼りがちです。しかし自己申告は本人が言語化・自覚できる範囲しか捉えられず、表情に現れる無意識・非言語の反応は取りこぼされます。私たちは、この「言語化できない領域」にこそ意思決定を変える情報が眠っていると考え、そこを定量化することに取り組んでいます。誰も本格的に手をつけてこなかったのは、心理学の専門性とAI技術の両方を、ビジネスに実装できる形で併せ持つ必要があったからです。
どのような企業がターゲットですか?
特にフィットするのは、人の感情・体験を扱うことが事業の核にある組織です。具体的には、製造業・メーカーのR&D/商品開発部門(「心地よさ」「安心感」など体験価値を評価したい)、広告・マーケティング・UXリサーチ会社、カウンセリング/コーチング/研修などの対人支援サービス事業者、そして人や組織を研究する研究機関などです。「これまで勘と経験でやってきた評価を、根拠あるデータに変えたい」という課題意識を持つ企業と特に相性が良いです。
逆に、感情データを取得すること自体が目的化していて、その先に「どんな意思決定や改善につなげたいか」が定まっていない場合は、十分に価値を引き出せません。また、評価したい体験や仮説が曖昧なまま「とりあえずAIで感情を測れば何か分かるはず」という期待だけで導入されるケースも、期待値とずれてしまいがちです。私たちは測ることではなく測った先の意思決定を一緒に設計するパートナーなので、解きたい問いが明確な企業ほど成果が出ます。
サービスの特徴と提供の流れ
サービスの特徴・強みを教えてください。
当社は感情認識AIの開発力だけでなく、心理尺度の開発や実験設計といった心理学の専門性を社内に併せ持っています。これにより、「そもそもこの体験はどう測れば妥当か」という設計段階から支援できます。AIベンダーと心理コンサルが別々だと、データは取れても解釈と打ち手に落ちません。両方を一気通貫で提供できることが、他社では再現しにくい強みです。
サービス提供の流れを教えてください(問い合わせ〜提供完了まで)
まずお問い合わせ・ヒアリングでは、「何を明らかにしたいか(解きたい問い)」を丁寧に伺います。感情データで意思決定をどう変えたいかを一緒に言語化する、最も重要なステップです。次に課題・測定設計として、心理学の知見をもとに、評価したい体験や仮説に対して「どう測るか」を設計します。
続くトライアル/PoCでは、実際にエモリーダーで感情データを取得し、想定した示唆が得られるかを小さく検証します。本導入・分析の段階では、取得データを心理学的に分析し、意思決定や改善アクションにつながる形でレポーティングします。最後に活用定着・継続支援として、運用に乗せ、必要に応じて分析観点や測定設計をアップデートしていきます。
今後の展望
今後の展望と、サービスを通じて実現したい未来について教えてください。
表情から感情を読み取るエモリーダーはその入口であり、ここから言語データの分析や、人を模したAIエージェント群による社会シミュレーションなど、人間理解をより広く・深く支えるプロダクト群へと展開していきます。
業界に対しては、「人を扱う仕事=属人的で再現できないもの」という常識を変えたいと考えています。プロフェッショナルの暗黙知をデータで可視化し、評価し、共有できるようにすることで、対人支援や商品開発、組織づくりの質そのものを底上げできるはずです。最終的には、一人ひとりが自分と他者への理解を深め、自分の価値観に沿った人生を歩む。その支援を、テクノロジーを通じて広げていくことが私たちのゴールです。
AI導入を検討中の企業担当者の方に向けて、メッセージをお願いします。
いちばん最初に考えていただきたいのは、「AIで何ができるか」ではなく「自社が本当に解きたい問いは何か」です。AIはあくまで手段であって、目的が曖昧なまま感情を測る、データを取ること自体がゴールになってしまうと、必ず期待値とずれます。
おすすめは、小さく始めて検証することです。最初から全社的な仕組みを作ろうとせず、「この体験を、この観点で測ってみる」と的を絞ってPoCを回すと、データが意思決定をどう変えうるかが具体的に見えてきます。やってはいけないのは、ツールの精度だけで導入可否を判断してしまうこと。本当に大事なのは、取得したデータをどう解釈し、どんなアクションにつなげるかの設計です。
特に感情や心理のように繊細な領域は、技術と専門知の両方が噛み合って初めて成果につながります。「測ること」の先にある意思決定まで一緒に考えてくれるパートナーを選んでいただくことが、AI導入を成功させる近道だと思います。
株式会社エモスタの企業概要

| 会社名 | 株式会社エモスタ |
|---|---|
| 代表者 | 小川 修平 |
| 所在地 | 東京都 |
| 設立 | 2017年 |
| 事業内容 | 心理学とAI技術を融合し感情認識や社会シミュレーションで企業の課題解決を支援するソリューション企業。 |
| サービス名 | エモリーダー |
| 公式サイト | https://emosta.com/ |
編集後記
エモリーダーの話で一貫していたのは、「測ること」をゴールに置かない姿勢でした。感情データの精度や取得そのものではなく、取得したデータをどう解釈し、どんな意思決定や改善につなげるかの設計こそが価値の源泉だという指摘は、AI導入を検討するすべての担当者にとって示唆に富みます。感情認識AIの開発力と、心理尺度の開発・実験設計という心理学の専門性を社内に併せ持つことで、「そもそもこの体験はどう測れば妥当か」という段階から支援できる点が、同社の強みとして語られていました。
向いている企業・向いていない企業をはっきり線引きしていたのも印象的でした。解きたい問いが明確で、勘と経験による評価を根拠あるデータに変えたい組織ほど成果が出やすい、という言葉は、ツール選定の前に自社の目的を見つめ直すきっかけになります。まずは的を絞ったPoCから、感情という「測れないもの」をどう意思決定に生かせるか試してみてはいかがでしょうか。





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