画像生成AIのMidjourneyが2026年6月18日、医療部門「Midjourney Medical」を立ち上げ、初のハードウェア製品となる全身超音波スキャナー「Midjourney Scanner」を発表しました。体を水に沈めて約50万個の超音波センサーで全身を撮り、最終的には60秒・数ドルで体内を3D化することを目標に掲げています。ただし現時点のプロトタイプは1回のスキャンに約20分かかり、画像処理にAIはまだ使っておらず、FDA(米食品医薬品局)の診断用承認も受けていません。テキストから絵を作る会社がなぜ医療機器なのか、発表の中身を整理します。
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画像生成AIのMidjourneyが医療部門を立ち上げた
Midjourneyは、文章を入力すると画像を生成するAIサービスで知られるサンフランシスコの企業です。今回その会社が、画像生成とは畑違いに見える医療イメージングへ参入しました。新設した「Midjourney Medical」部門を率いるのは、AppleでVision Proの開発に携わったAhmad Abbas氏です。発表の場には共同創業者でCEOのDavid Holz氏も立ち、超音波で全身の3D画像を作る装置の構想を語りました。

同社が「Ultrasonic CT(超音波CT)」と呼ぶこの装置の狙いは、MRIやCTといった既存の高額・大型な医療画像診断を、速く安く置き換えることにあります。Holz氏は装置が体内をコンマ数ミリ単位で立体化できると説明し、その原理をイルカのエコーロケーション(反響定位)になぞらえました。
Midjourney Scannerの仕組みは水中で全身に音波を当てる方式
Midjourney Scannerは、放射線も強力な磁場も使いません。受診者を浅く水を張ったプールに、毎秒およそ2インチ(約5センチ)の速さでゆっくり沈めていきます。プールの周囲には約50万個の超音波センサーが並び、あらゆる角度から体に音波を当てます。体内で反射した音波を集めて再構成すると、毎秒テラバイト級のデータから全身の断層画像が立ち上がります。
放射線被ばくがなく、MRIのように狭く長い筒に閉じ込められることもない点を、同社は既存検査に対する優位として強調しています。一方で、これだけのセンサーから出る膨大なデータをどう高速に画像へ変換するかが装置の肝であり、その処理の高速化こそ将来AIを投入する余地と位置づけられています。

目標は60秒・数ドル、ただし現状は20分かかりAIも使っていない
発表で示された最終目標は、1回のスキャンを60秒未満で終え、コストを数ドルに抑えることです。MRIは撮影に60〜90分かかり、検査費用も装置や部位によって数百ドルから1万ドル超まで幅があります。これと比べれば、Midjourneyの掲げる数字は約100倍の速さと桁違いの安さになります。
ただし現実とのギャップは大きいです。現時点のプロトタイプは1回のスキャンに約20分を要し、これまでにスキャンを受けたのは十数人程度にとどまります。さらにHolz氏自身が「ここにはまだAIを一切使っていない」と認めており、宣伝文句の60秒や数ドルは現行機の実測値ではなく、世代を重ねた先の到達目標である点は読み違えないようにしたいところです。
| 項目 | Midjourney Scanner(目標) | 一般的なMRI |
|---|---|---|
| 撮影時間 | 60秒未満(現プロトは約20分) | 60〜90分 |
| 費用 | 数ドル(目標) | 数百〜1万ドル超 |
| 被ばく・磁場 | なし(超音波) | 放射線なし・強磁場あり |
Butterfly Networkの超音波オンチップ技術をライセンス
装置の中核となる超音波チップは、ハンディ型超音波機器を手がける上場企業Butterfly Networkからライセンス供与を受けています。両社は2025年11月に共同開発契約を結んでおり、契約規模は5年間で最大7,400万ドルとされます。
現行プロトタイプにはButterflyの超音波オンチップ・モジュールが40基組み込まれていますが、約50万センサーの完成形に向けては搭載数を大幅に増やす想定です。Midjourneyは2028年に独自設計のカスタムシリコンを用いた次世代機を投入する計画も示しており、当面はButterflyの既製チップで土台を作りつつ、自前のハードウェアへ移行していく筋書きになっています。
診断ではなく「体組成マップ」、FDA未承認という現実
医療機器として最も重要な点は、Midjourney ScannerがまだFDAの診断用承認を得ていないことです。そのため同社は当面、この装置を病気を見つける診断機器としてではなく、体内に何がどこにあるかを示す「ボディコンポジションマップ(体組成マップ)」を提供するものとして位置づけています。体組成の可視化であれば規制承認を必要とせずに提供できるためで、診断を名乗らないことで規制の壁を当面回避する構えです。
同社は今後12か月かけて研究的な試験を進めるとしています。裏を返せば、現段階では撮った画像をもとに医師が病気の有無を判断する用途には使えないということであり、医療機器としての実用性を評価するのは時期尚早です。
2027年にスパ開設、2031年に世界5万台という構想
Midjourneyはこの装置を、2027年末にサンフランシスコで開く「Midjourney Spa(ミッドジャーニー・スパ)」に設置する計画を打ち出しました。検査室ではなくスパという文脈で全身スキャンを体験させる発想は、医療機器というより消費者向けウェルネス体験に近いものです。
長期目標はさらに大きく、2031年までに世界で5万台のスキャナーを展開し、月あたり10億回のスキャンをこなす規模を見据えるといいます。提携相手のButterfly Networkも今回の発表に関するコメントを公表しており、超音波イメージングを一般消費者の身近な体験へ広げる動きとして受け止められています。
AI業界と医療にとっての意味
注目したいのは、画像生成AIの会社が「画像を生成する」のではなく「身体から画像を取得する」側へ踏み出した点です。膨大なセンサーデータを高品質な画像へ再構成する処理は、生成モデルが得意とする領域と地続きで、Midjourneyがこれまで培ってきた画像の知見を診断画像の再構成に転用しようとしていると読めます。SNS上でも、AI企業が事業領域を越えていく動きとして受け止める声が目立ちました。
Midjourneyが「Medical」部門を発表。画像生成AIの会社が、ついに「人間の身体を可視化する側」へ。業界の境界線が、どんどん溶けていく印象です。
一方で、医療は規制と臨床的エビデンスが支配する世界であり、画像の見栄えだけでは前に進めません。期待だけでなく、提携先Butterfly Networkの株主からは厳しい見方も出ています。
bflyホルダーとしてmidjourney medicalをみて正直どうすればいいか戸惑っている。タイミングは最高、出てきたものは最悪。失敗するのがわかってるからみんなやらなかったことが出てきた感じだ。
現プロトタイプにAIが入っていないこと、診断を名乗らずに体組成マップから始めること、12か月の試験を控えていることは、いずれもその慎重さの裏返しでもあります。壮大な目標と現状の隔たりは大きく、発表時点では構想の段階にあると理解しておくのが妥当です。
まとめ
Midjourneyの医療参入は、生成AI企業がハードウェアと規制産業へ越境する象徴的な動きとして注目に値します。60秒・数ドルで全身を撮るというビジョンは魅力的ですが、現行機は20分かかりAIも未使用、FDA承認もこれからという段階にあります。誇張された数字に踊らされず、研究試験の結果や規制対応の進み具合といった事実ベースの進捗を追っていくのが、このニュースとの正しい付き合い方になります。
出典: Midjourney Medical 公式、GIGAZINE、Engadget、Butterfly Network IR。




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